紅茶に砂糖を入れるのは邪道だろうか。紅茶屋による解説

紅茶について
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紅茶には砂糖を入れるほうがいいでしょうか?
何も入れないほうがいいでしょうか?
「お茶自体の味をしっかり感じるためにはストレートティーでなくてはダメだ!」と言う人もいれば、「海外では無糖のほうが少数派だ!」「逆に入れた方が味が深くなる」と言う人もいます。

嗜好品なのだからそれぞれの好きにすりゃいいじゃないか、と言えばその通り。
しかしもう少し深く掘ってみましょう。

今回は、紅茶と砂糖の関係について解説します。

紅茶に砂糖、のはじまり

紅茶に砂糖を加えるのは、そもそもいつ頃から始まったことか? これを探ると、時代は1660年代まで遡ります。
ポルトガルの王女キャサリン・オブ・ブラガンザ(1638~1705)が、イングランド王チャールズ2世のもとに嫁いできた際、当時大変な高級品だった「万病にきく東洋の神秘薬、茶の葉(および、中国や日本製の茶器・茶碗)を船3隻分」「砂糖(同じ重さの銀と同価値)を船7隻分」を持参しました。
貿易先進国だったポルトガルの王女だからこそ出来ることですね。

彼女がイギリス王侯貴族や宮廷関係の貴婦人たちに、茶を楽しむために飲むという習慣・茶に砂糖を入れて飲む方法を広めていきました。
まだ薬用としてしか使われていなかった茶でしたが、このことから喫茶習慣として文化の形成がはじまります。貴重な白磁器を蒐集・鑑賞・そして自慢する…アート的な楽しみ方も貴族たちのステータスシンボルになりました。

やがて緑茶よりも渋味の強い発酵茶である紅茶が輸入されるようになり、一般に紅茶を提供していた「コーヒーハウス」の発展とともに、砂糖とミルクを加えて飲む方法もイギリスの中で定着していったようです。

ー「英国紅茶の歴史」(2014.5 河出書房新社)等より

紅茶に砂糖を入れる国と入れない国

実はそれぞれの文化によって、(多数派の)飲み方はけっこう違います。

まず紅茶の国イギリスでは、紅茶に砂糖を入れる派の人は約30%。ミルクを入れる人は98%だそうです。(!)

また、世界一の紅茶生産量を誇るインド。国内の消費量もとても多いです。
茶葉をミルクとスパイスと砂糖で煮出した『チャイティー』が主に飲まれていて、砂糖なしの紅茶を飲む人はあまりいません。

そして、1人あたりの紅茶消費量が世界一のトルコ。
トルコの紅茶も『チャイ』と呼びますが、インドとは違ってミルクやスパイスが入りません。チャイダンルックという特殊なヤカンを使って茶葉を煮出し、たっぷり砂糖を加えて飲みます。
最近では、ダイエット目的のために少しずつ無糖派が増えてきたのだとか。

紅茶以外のお茶の場合

ここからは紅茶に限らない「茶全般」の話になりますが…

世界では、お茶を飲む場合に砂糖を入れない方が珍しいそう。例えば、
・アメリカでは、緑茶(激甘)の「AriZona」という名のアイスティーが人気
・甘いお茶のイメージはあまり無い中国にも、甘いお茶を飲む地域がある
・ベトナム(一人あたりの茶の消費量が多い国)でも、茶に砂糖を入れる。コーヒーも砂糖や練乳で甘くする
・タイ(一人あたりの茶の消費量が多い国)の食文化では、ハッキリと酸っぱいか甘い・辛い・または甘辛いものばかり。砂糖で甘くしていないお茶は受け入れられない
・モロッコでは、ミントティーに大量の砂糖を入れる

そんな感じらしいです。
海外のかたは、日本の緑茶が無糖製品ばかりなので驚いたりもするのだとか。

紅茶のブレンダーはどう考えるのか

ここまでは歴史やそれぞれの文化のお話。これを踏まえて…
紅茶の生産で仕事をする味覚のプロ、ティーブレンダーはどのように考えているのでしょうか。

2020年にこんな本も出ています。


トップブレンダーが教える紅茶の流儀(誠文堂新光社)

著者の内田智子さんは、世界地図のティーベルト(茶樹の生育に適した気候の緯度)を見て「沖縄でも美味しい紅茶が作れるに違いない」と考え、紅茶づくりに取り掛かったそうです。
そのためにスリランカにも渡って3年間紅茶の勉強をしたのだとか。スゴい行動力です。

こちらの本にある「紅茶の味を可視化する味覚チャート」では、
ストレートの場合
砂糖のみ入れた場合
ミルクのみ入れた場合

の3パターンで味わいが分析・記録されております。これが非常に面白い。
プロ中のプロは、やっぱり「ぜんぶOK!」という考えなのでしょうかね。

ご興味あれば一度ご覧あれ。

どのくらい入れるのがいいか

これは、もうまったく人それぞれ… というのが正解に近い気もしますが、一応の基準を申しますと

ホットティー:ティーカップ1杯(150ml)に3~5g程度
アイスティー:グラス1杯(200ml+氷)にガムシロップ1個程度

くらいが良いかと感じます。
ふわりと甘く、しかし茶葉自体の味も損なっていないのが最適かなと。

ちなみに私はストレートティーには何も加えず飲む、ミルクティーには砂糖を足したり足さなかったりする派です。単純に甘くなるだけではなく、茶葉のもつ味わいの深みがより感じられてパーフェクトなティーになる場合もあるのですよ。

終わりに

紅茶に砂糖、いかがでしょうか。
もちろん嗜好品なのだから、すべてそれぞれの自由にするのが本当の正解ですね。おのおのが己の嗜好性を探って、より深い追求の旅を楽しみましょう。

よいティータイムになりますように。